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Matrix Reloaded: アーキテクトとの会話シーン和訳と考察少々

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The Matrix三部作のうち、印象深いシーンは数多くあるが、その中で最も難解で、なおかつ物語の核心に触れるシーンと言えば、Reloaded終盤のネオとアーキテクトとの会話のシーンだ。

このシーンでは、マトリックスの存在意義そのものについてだけでなく、人間と機械の関係、(即ちその実態は機械によるザイオンのメンバーを除く全人類の支配という構図だが)、というMatrixシリーズの世界観の根幹をなす概念について語られる。

既にMatrixという作品は、2016年時点において13年前の作品であるが、今なおこの映画を新しく見る人にも、当時劇場で見た人にも、(特にSF愛好家に対してかもしれないが)、このシーンで語られる機械と人間の関係は実に示唆に富み、なかなかに味わい深い感覚を残すと思う。

今更需要があるかはわからないが、自分なりにアーキテクトの言葉を日本語にしてみようと思う。また、個人的な考察を注釈として入れた。もしこの映画を見る/見た人が物語の核心部分について考察する際に、この記事が何かの参考になれば幸いだと思う。

尚、翻訳に際してTranscriptの原文はこちらを参考にした。

 

アーキテクト:やあ、ネオ。

ネオ:あなたは誰だ?

アーキテクト:私はアーキテクト。マトリックスを作った者だ。君を待っていたんだよ。君は多くの疑問を抱えているようだが、一連の処理過程(プロセス)によって君は意識を変えられはしたけれども、それでも決定的にヒトであり続けている。それゆえに、私による答えのいくつかを君は理解するだろうが、理解しないものもあるだろう。そうであるならば、君の最初の質問は最も核心に触れるものとなるだろうね。もっとも君は、それがまた最も的外れであることに気づくかもしれないよ。気づかないかもしれないがね。

ネオ:僕はなぜここにいる?

アーキテクト:君の生涯は、マトリックスのプログラミング過程に内在する等式の不均衡がもたらす残余の総和によって生み出された。君は、私の真摯な努力によってさえ排除できない事態がもたらす異常値(アノマリー)なのであって、そうでなければ数学的に精緻な、調和がそこにはあったのだよ。私はこの問題について辛抱強く取り組み続けなければならないものの、予想外ではないことから、我々の支配が及ばないというわけではない。そうであるからこそ、君は容赦なく駆り立てられてしまったのだよ。――ここへ。

ネオ:あなたはまだ僕に答えていない。

アーキテクト:その通り。興味深い。他の者よりも反応が速い。

 ※画面に映る別のネオの反応:「他の?」「他のって何だ?」「他が何人いるんだ?」「質問に答えろ!」

アーキテクト:マトリックスは君が知るよりも古いのだ。変則性の完全体*1がひとつ出現してから次に出現するまでを数えるのが私は好きなのだが、それによるとこれは6番めということになる。

※再び、画面に映る別のネオの反応:「僕の前に5人いただって」「騙されていたのか」「嘘をつくな!」

ネオ:可能性としては二通りの説明しか考えられない。――誰も教えてくれなかったか、誰も知らないんだ。

アーキテクト:まさにその通り。君が疑いなく理解しつつあるように、アノマリーはシステムの産物であって、最も単純な等式においてさえ揺らぎを生みだすものだ。

※画面に映る別のネオ:「お前に支配されてたまるか!」「ファ○クユー!」「お前をぶっ殺す!」「僕に何をやらせようとしたって無駄だぞ!」

ネオ: 選択。これは選択の問題なんだ。

アーキテクト:私が最初に設計したマトリックスは実に完璧そのものだった。芸術作品と呼ぶにふさわしく、完全無欠で、至高だった。輝かしい勝利とは決定的な敗北に等しいことに他ならなかったのだが。その滅びゆく運命の必然性が今の私にとって明白なのは、全ての人間が持つ不完全性が原因だとわかったからで、だから私は君たちの歴史に基づき、君たちの性質の多岐にわたる複雑怪奇さをより正確に反映させて再設計したのだ。――しかしながら私はまた、失敗に悩まされることになった。やがて私は、答えから私を遠ざけている理由を理解するようになってきていて、それにはより知性の劣る、もしくは完璧を追求する度合いが低いとでも言うべき知性が必要だったからだとわかったのだ。したがって、答えは他の、ある直観プログラムによってもたらされることになった。当初は人間の精神のある側面を調べるために作られたものだ。私がマトリックスの父であるならば、「彼女」は、間違いなく母であるだろう。

ネオ:預言者(オラクル)のことだ。

アーキテクト:頼むよ*2。私が言ったように、彼女が解決法をもたらし、選択が与えられる限り、被験者の99.9%近くがプログラムを受け入れたのは事実だ。それをたとえ殆ど無意識レベルでしか認識できなかったとしてもね。とはいえ、この解決法が機能したとは言っても、根本的に欠陥を抱えているのは明白であって、放置すればシステムにとって脅威となるシステム異常(アノマリー)を矛盾的に生みだす。したがって、プログラムを拒否した者たちを、少数派ではあるものの、看過すれば最悪の事態を引き起こす可能性を増大させるばかりなのだ。

ネオ:これはザイオンのことだ。

アーキテクト:君がここにいるのはザイオンが破壊されようとしているからだ。そこに住む者たちが根絶やしにされ、その存在全てが抹消されようとしている。

ネオ:嘘を言うな。

※画面上のネオも一斉に口を揃える。

アーキテクト:拒否は人間の最も予想されうる反応だ。しかし考えてもみてくれ、我々がそれを破壊するのは6回目になるんだよ。そして我々は、極めて効率的にできるようになってきている。

※トリニティーとエージェントの戦闘シーン。

アーキテクト:救世主の役目は今やソース(根源をなすプログラム)*3へと戻り、一時的に君が持つコードを解放し、主要プログラムに再度組み込むことなんだよ。その後、君はザイオンを再生するため、マトリックスから女性16人、男性7人となる23人の個体を選び出す必要がある。*4このプロセスに従わない場合、深刻なシステムクラッシュを引き起こし、マトリックスに繋がれた全員の死亡、及びザイオンの消滅と同時に、最終的には人類の絶滅を引き起こすだろう。

ネオ:そんなことはさせないはずだ。できないはずだ。お前たちは生きるために人間が必要なんだ。

アーキテクト:我々が受け入れる生存レベルというものがあるのだ。それよりも、似たような問題として挙げられるのは、君がこれから世界の全人類の死の責任を受け入れる準備が出来ているかどうかということではないのか?

※アーキテクトのペン先によってマトリックスという現実世界に生きる人々の様々な映像がモニターに映しだされる。

アーキテクト:君の反応を読むのは実に興味深い。君の前任者5人は似たような筋書きによって、偶発的に肯定的な意思を発揮するように設計されていたが――君たち人類の存続に対する強いこだわりが、救世主としての機能を促進するためにね。他の者たちはこれをかなり一般的に広く体験したが、君の体験は遥かに限定的であるようだ。一対一の……愛情さ。

※ネオが夢で見たトリニティーとエージェントが戦うシーンがモニターに映し出される。

ネオ:トリニティー

アーキテクト:そういえば、彼女はマトリックスに入ったよ。君を救うため、自分の生命を犠牲にしてね。

ネオ:そんな!

アーキテクト:我々はいよいよ真実の瞬間に引き出される。根本的な欠陥が究極的に表現された、アノマリーが始まりと終わりそのものであるという真実だ。――そこに2つの扉がある。右の扉はソース、そしてザイオンの救済へとつながっている。左の扉はマトリックス、彼女のいる所へ、そして君たち人類の終焉の運命へと戻る扉だ。君が適切に挙げたように、これは選択の問題なのだよ。しかし君と私は既に君がどちらを選ぶのか知っているとは思わないかね? 私には既に連鎖反応が見えている、際立った感情の発現を示す化学反応の兆候だ。それは論理や常識をも圧倒するように出来ていて、その感情は、これほど単純かつ明白な真実さえ見えないほどに君を盲目にしてしまっている……。彼女は死ぬ、そして君にはそれを止める術がないことは明白であるというのにも関わらずだよ。

※ネオは左の扉に向かって歩き出す。

アーキテクト:フン。希望か。君たち人間の典型的な妄想であると同時に最大の強みであり、そして最大の弱みの源泉か。

ネオ:僕がお前なら、二度と会わないことを望むだろうね。

アーキテクト:当然、会わんよ。

 

2021.2.27 翻訳と考察に若干修正を加えました。

*1:ネオはintegral anomalyと呼ばれ、マトリックスにおける変則コードを全て持っている。そのため変則コードを全て持ったネオがソース(つまりアーキテクトによって示された右の部屋)に辿りつくと、このコードが直ちにマトリックスにばらまかれ、一体化され(もしくは消去され)、マトリックスは完全となる。つまりマトリックスに繋がれた人間が選択を受け入れる確率が99.9%から100%へと限りなく近づき、マトリックスはより安定し、機械による人間支配が強化される。これをマトリックスがReloaded(再起動)されたという。アーキテクトの話では過去に5回行われた。しかしその状態も、次に変則的存在が出現するまでの間しか維持されない。こうしてマトリックスは再起動されるたびに機械による人間支配が強化されていく世界となっている。

*2:アーキテクトの表情からは、暫定的には解決するものの根本的に欠陥のある解決法を導き出したオラクルに対し、預言者などという大層な呼び名は似つかわしくないと考えていることが窺える。

*3:ソースとは機械のメインフレーム、現実世界の機械を制御している根源となるコンピュータそのものであると思われる。Revolutionsの最後で現れたデウス・エクス・マキナ自身を構成するプログラムのこと。

*4:23人の内訳が女性16人、男性7人となる理由はなんでしょう。『マトリックス』の世界で過去5回あったという機械と人類の戦争(すべて機械側の勝利)を経て導き出された、人類が存続(または社会を運営)するのに必要な最小単位だとされているのかもしれません。いずれにしろこの男女比では遺伝子の多様性は担保されないでしょうし、遠からず人類は滅亡する気がするのですが…。まあ、そもそも『マトリックス』の世界で機械側は救世主出現のたびにマトリックスを再起動させ、選ばれた23人を除き人類を滅亡させているので、遺伝子の多様性なんてものは問題とはならないのかもしれないですね(?)。ちなみに創世記7章16節(ノアの箱舟に関する話)の引用ではないかとされる説も海外ファンサイトに記載されており興味深いですが、信ぴょう性のほどは(キリスト教徒でない)筆者には不明でした。