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私の好きなトピックについて気ままにつづるブログです。洋楽の歌詞和訳や映画の話など。

君は愛を知らない - You don't know what love is

Yeah... I get it. You have no idea what love is.

そうか…わかったよ。君は愛がなんなのか知らないんだな。

 

タイトルのフレーズは有名なジャズの名曲で,今回はそれに関しての雑記です。

冒頭のフレーズは私が思いついたものですが,似たようなフレーズは結構頻繁にいろんなドラマや映画(私が好んで見ている海外ラブメロでは特にそうなのかもしれないですが)では耳にすることが多いもので,そのたびに強烈な一言だな~と思わずにいられないです。(まあ,映画などは愛をテーマに据えたものも多いですしラブメロはラブがテーマですから。)

このフレーズからは「君は愛ってものを知らないんだな」と決めてかかって,相手にピシャリと冷や水を浴びせる感じのなかなか強烈な一撃という感じがしませんか。言われた側は激怒するか途方に暮れた表情になり後日その相手と恋に落ちるところまでがセットですよね。

 

ところでこのフレーズに関連して,有名なジャズの名曲に「You don't know what love is」という曲があり,ジョン・コルトレーンチェット・ベイカーによる演奏が有名です。

Wikiによれば1942年に上映された映画「Keep 'Em Flying (1941)」(いや全く知らない映画ですねこれは…)の挿入曲として書かれ,Carol Bruceという女性シンガーによって歌われた曲だそうですが,いや全く知りませんすいませんという気持ちで,やはり有名なのはジャズで,マイルス・デイヴィスが1954年に行ったインストゥルメンタル演奏からジャズのスタンダード曲として有名になっていったようです。

You Don't Know What Love Is - Wikipedia

聞けば聞くほどに,主題のメロディからはまさに冒頭のフレーズにも通ずるような,「君は愛のなにを知ってるんだ?」と問いかけられているようなヒリヒリする感じがあります。

チェット・ベイカー「You don't know what love is」ではこの愛することについての痛みというものが,チェットのなめらかで悲しい歌声に乗せて一層増幅された形で表現されています。

 


www.youtube.com

 

で,この曲は歌詞がとんでもなく良いのですが,その意味を突き詰めて理解しようとすればするほど途方もない深さの深淵へ自由落下していく恐怖感さえ感じるようなメッセージ性を帯びています。

冒頭の歌い出しから,もう引き込まれてしまいます。

You don't know what love is
Until you've learned the meaning of the blues
Until you've loved a love you had to lose,
You don't know what love is.

You don't know how lips hurt
Until you've kissed and had to pay the cost,
Until you've flipped your heart and you have lost,
You don't know what love is.

(よく見ると末尾にピリオドが打たれており,散文に近い詩なのではないかと思います)

いつか歌詞の和訳に挑戦してみたいですが,私の30年の人生経験ではとても足りない感じが致しますので,チェットの歌声を自分の声で意味を理解できるようになるその日までは手を出さないでおこうと思う一曲です。

 

で,何の話がしたかったというと。(実はチェットの話ではなかった)
このごろ在宅で仕事中にApple musicをかけていることが多いのですが,フレーズのある曲は耳が意味を追いかけてしまうので仕事に集中できないことからラテンジャズのラジオステーションをよくかけています。

そしたらある日,チューチョ・ヴァルデスというキューバのピアニストによる「You don't know what love is」が聞き覚えのある主題メロディとともに流れてきて,全然知らない奏者だったけども,この現代風のピアノアレンジがもうもうもう本当によくて,即プレイリストに入れて年始から何度も何度も聴いてしまった。

ピアノでこんなふうにジャズの名曲をアレンジできるのかという点にも驚いたし,特に,0:50あたりの少し立ち止まって考え,また歩み始め,また足を止め…と主題について内省と進展を繰り返している様子を思わせるコード進行が美しく,とても心を打たれました。

youtu.be

前パラグラフでも触れた奏者のチューチョ・ヴァルデスは,キューバ出身のピアニストなのですが,2001年と2017年にラテンジャズの分野でグラミー賞を受賞しているラテンジャズ界の超有名人のようなのですが,私は最近この分野を聴き始めたところで全然知りませんでした。

先程の「You don't know what love is」は2003年のアルバム「New Conceptions」収録曲で,アルバム名にもあるとおり名曲の新しい解釈を取り上げたアルバムなのかもしれません。

チューチョ・バルデース - Wikipedia

 

ラテンジャズ,かなりはまってます…という記事でした。
フレーズが聞き取れないので仕事に集中できるのはそうなのですが,ラテンジャズの歌手は「familia」のこととなると熱が入るようで,手を変え品を変えアピールしてくるのでそこだけ気を取られて作業の手が止まってしまうのは盲点でした😂

仕事中に明るいリズムのラテンジャズ,おすすめです。

 

 

余談of余談。

Sex and the cityというドラマが一時期大好きで,S1の第1話,キャリーとMr. Bigの別れ際の会話が今もすごく印象に残ってる。「I get it. You've never been in love. (わかったよ。君は恋をしたことがないんだな)」とのMr. Big発言のかっこよさといえば電撃級だった。キャリーはあの瞬間にMr. Bigに恋してしまったんだろうし,あとのエピソードの悲喜こもごもの原点となった一言だったのかなって全シーズンを見終えたあとにしみじみ振り返ってみて思った。