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私の好きなトピックについて気ままにつづるブログです。洋楽の歌詞和訳や映画の話など。

ボストン・リーガル S5ep10 ドタバタ感謝祭

ボストン・リーガル S5ep10 ドタバタ感謝祭

今回はシャーリー主催で事務所のメンバーがシャーリーの自宅に集まって感謝祭のパーティを開くことに。ところが皆が皆トラブルメーカー揃いのメンバーなだけに早くも暗雲がたちこめシャーリーは不安。シャーリーを安心させようとするカールだったが,果たして予想は的中することに。

パーティーの気まずい進行にハラハラさせられながらも,各メンバーが長年心の奥に秘めた感情や思いを明らかにしていく過程が丹念に描かれたシリーズ屈指の心があたたまる回。メンバーそれぞれが抱える問題や弱さにすこしずつ光があてられ,それぞれのやり方で向き合い始めた様子。

 

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以下にその内容を挙げてみる(ネタバレです)。私が特に好きなのはジェリーがケイティに思いを打ち明ける場面です。

デニーは自身のBSE(と本人や周囲が呼んでいる認知症の症状のこと)が進行していることを徐々に受け入れ始める

・アランは自身の不幸な生い立ちについて,幼少に夢見た理想の感謝祭について話す

・シャーリーは静かな部屋にいるときに亡き父の声が聞こえることがあると告白する

・ジェリーはケイティに思いを打ち明ける。ここ,これ,このとおり!待ってました!ついに!この場面でのジェリーの告白には,過去数シーズンにわたって彼が自身の社交性について悩み苦しみ克服してきた様子を見てきた視聴者にとっては胸を打たれるものがありました。

ジェリー:僕は君が好きなんだ。僕が君を好きだからといって,君がそれに応える必要は一切ないし,残念賞がわりに君との素晴らしい友情が続けばいいと思っている。それでも君に知っておいてほしいのは,君は誰よりも非凡で,寛大で,慈悲があり,美しい女性だということ。そして僕が君を好きだということもね。

Jerry: I love you. I realize that imposes no obligation on your part to love me back. And as consolation prizes go, I can think of nothing more extraordinary than your friendship. You need to know that you are the most incredible, generous, charitable, beautiful woman I have ever met. And I'm in love with you.

 

エドウィン・プールはアフリカン・アメリカンの男の子を養子に迎える(この人は事務所の代表として「クレイン・プール・シュミット」のうちの一人であるにもかかわらず全シーズンを通して出番が少なく,出番があればズボンを履かずに出勤したりでたらめな訴訟をおっぱじめたり口が異様に軽かったりでデニーと並ぶクレイジーさ。だけど懐の深さをのぞかせる一面も)

・カールはシャーリーに結婚を申し出る。(ついに!)。初登場時は面白みにかける堅物という描き方だったカールが一番「クレイン・プール・シュミット」の風土に影響を受けている様子なのがしみじみ伝わってくる。

・ちなみにボストン・リーガルには数エピソードしか出演していないメルヴィン・パーマーはその存在感ゆえかパーティーにもいきなり登場。終始,彼の口癖であるところの”Hoot”(愉快なやつ)を演じ,ちょい役のはずがなかなかの存在感。メルヴィンは毒舌のアランがいくらねちっこく攻撃しても暖簾に腕押しなのでアランの大敵w I know what you are! That's what I do!が口癖の「無自覚な悪意の塊」なのに周囲に善を振りまくのでなぜか憎めない性格。相手の懐にぐいぐい入っていく小悪魔系の50代男性という感じで私はけっこう好きなキャラです。笑

 

ということでep10はシーズン5までの集大成ともいえるつくりでとても良かった。というか…デニーが自身の症状と向き合い始める場面や,ジェリーがケイティに想いを告白する場面は良すぎてふつうに感動して涙が出てしまった……

最後,アランとデニーはバルコニーで天を見上げ,グラスをあげて,「Thanks」とつぶやく。これまでのエピソードで未解決となっていた問題の点と点がつながり,一体となって理解された瞬間のようだった。ep10は本当によかった。

 

ボストン・リーガルもいよいよ残すところ3エピソードとなりました。事務所の経営破綻に,デニーの失恋に(結婚相手の出現に,いやもう相手が誰なのかは皆知ってますね),まだまだドタバタは続くようです。

 

このドラマが全シーズンを通して伝えたかったメッセージは,欠陥があり不完全で弱い存在であるがゆえに人は完璧さを求めてやまないけれども,人と人はその不完全さゆえに惹かれ合うということなのかなとここまでボストン・リーガルを見てきて私は思います。「人は不完全であるがゆえに惹かれ合う」とは私がとても愛するテーマであり,これからの人生でも追求していきたいテーマです。ボストン・リーガルはそのことをテーマの中心に捉えた稀有な作品であり,私のなかでここ数年の最大のヒット作となりました。

 

そんなことを思った2021年の暮なのでした。